北千住奇想曲
「ヤマダくんは全然、そーゆー話にくらいついて来なかったよ、昔からさ。」

「いや気にはなってたよ」

「まあ、そこが良いってのもあるんだけさ。今日はタクシー代を貸してあげた事だし、少しは食らいつく感じで付き合ってよ、おねがいっ!」

高校の頃はぼくが食らいつく必要がないくらい周囲がくらいついてた。
とは言え、こんな時間にこんな場所じゃ「食らいつき屋」は不在。
まあタクシー代の恩義があるので仕方ない。

「じゃあ、ここからはモードを切り替えよう」

「うん」
にっこりと微笑む彼女。

「じゃあ、気を取り直して」

「うん」

「同棲相手はオトコ?」
さっきまで聞きたいと思ってたことなので一番に質問してみた。

「イエス」

「付き合っている?」

「イエス」

「ふうむ。でケンカして飛び出してきたと?」

「イエス」

「なるほど、了解」

「・・・って、もっと掘り下げてよ・・・」

「いや、なんか話にくいのかなって配慮したつもりだったんだけど」
先ほどの反応を見てなんか訳ありで話したくない事をありそうだったからなんだが、谷沢藍はまた口を尖らせて抗議する。
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