北千住奇想曲
事情聴取は1時間程度で、それから身元引受人を呼ぶ運びになったらしい。
どちらかと言えば待っている時間の方が長くて、緊張して疲れた、と谷沢藍は語った。

急げば越谷までの終電には間に合う時間ではあったが、そのままお別れというのも忍びない気がしてぼくはこの間のデニーズに谷沢藍を誘った。

この前とほぼ同じ位置に腰を落ちつけると再び谷沢は再びぼくに礼を言った。

「本当にありがと。彼に頼むべきなんだろうけどさ。今、彼は海外に行ってるの」

「海外?」

ぼくは驚いた。
中古自動車屋と海外にどんな関係があるのか。

「まあ、ほぼ遊びだと思うんだけど。ロスでいろいろ車を見てくるって言ってさ。仕事だからって。昨日ちょうど日本を発ったとこだったの」

そういうとため息をついた。

「でも、居たとしても頼めなかったかな。彼にも内緒だったし」

「内緒だったの?別にいいんじゃないの?それくらいさ」

ぼくは単純にそう思った。
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