北千住奇想曲
「結構、ヤキモチ焼きなんだよ。自分は好き放題のくせにさ」

そういうとアイスコーヒーを手にして、ストローでかき混ぜるしぐさをした。

「お酒飲んでたの?」

谷沢藍は言った。

「同僚と飲んでてちょうど店を出たら電話がきた。びっくりしたよ。身元引受人なんて生まれて初めてだ」

「顔に結構でるんだね、ヤマダくん。ちょっと赤い」

じっとぼくの顔を見る谷沢藍にぼくはドキッとした。いろいろと慌しかったせいで意識してなかったけど、やはり谷沢藍のことをぼくは好きになってしまっているんだ。

「電車この時間じゃもうないんじゃない?」

ぼくらは少し疲れているせいもあって、この間のように話を続けることはなかった。
ポツリポツリと思い出したように継ぎ接ぎの会話を続けている。

「うん。またタクシーかな」

うーん、と小さな声で唸ってから谷沢藍はぼくに唐突に提案した。

「あのさ、タクシー代勿体無いし、うちにでも泊まる?」


突然の提案にぼくは文字通り言葉を失った。
こういう場合ってどうするべきだ?
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