北千住奇想曲
アサミさんはとりあえず有効に使わせてもらうよ、と冗談めかしたメールを直後にくれていた。
それに気がついたのはデニーズに入って飲み物をオーダーした直後だった。

「あのさ。財布・・・忘れちゃったんだよね」

「え?」

さすがに谷沢藍もびっくりした顔をした。

「居酒屋のレジに忘れちゃってたみたい・・・。さっき気がついたんだけど」

谷沢藍は考え込んだ。

「うーん。わたしが貸してあげればいいんだろうけど、今ちょうど手持ちがないんだよ。給料日前だし、銀行にもちょこっとしかないの。ここは当然払えるくらいはあるけどさ」

二人して今度は考え込む事になった。

「粗相はしませんからお願いします」

ぼくがそう言うと谷沢は「全然」と明るく言い、明日も仕事だろうからといって店を出る事になった。
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