北千住奇想曲
２人で並んで西口の駅前通りを歩いた。

つい１週間前、ぼくがここを１人で歩いていた時にはマッサージのお誘いがたくさん来たが、さすがに女連れには声がかからない。

明らかに日本人ではない女性達は連れの谷沢藍に気がつくと明らかに残念そうな顔をして遠のいていく。

ちょうど谷沢藍と再会した場所、即ち国道４号にでると道路を渡り左に曲がって国道沿いにしばらく歩いた。
５００メートル程度進んだ国道沿いのマンションに着くと、谷沢藍は「ここだよ」と言ってマンションの入り口でパスワードを入力して扉を開いた。

それまでぼくらの間に会話はなかった。
ぼくは緊張していたし、谷沢藍はなにか物思いにふけっているような顔をしたままずっと歩いていた。

時よりぼくは彼女の横顔をチラチラと見ていたのだが、まったくそれにも気がつかない様子だった。

エレベーターに乗り、５Fで扉が開くと彼女は先導するようにぼくの前を歩いた。
一番奥の部屋の前で鍵を取り出し、ドアを開けると「どうぞ」というジェスチャーでぼくを先に部屋に入れてくれた。
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