北千住奇想曲
「それじゃあ、一切の配慮無く、無神経かつ時よりかなりプライベートにも踏み込みつつ、さらに場合によっては土足で立ち入る感じで聞いてみる、でいいのか?」
半ばヤケクソ気味にぼくは言ってみる。

「土足・・・まあ、ヤマダくんにはソレくらいのほうがいいのかな?」

「土足だよ、土足。後で後悔しても知らないよ」

「・・・ヤマダくん。お酒飲んでるよね」

「そらそうだ。おかげで終電を逃して今に至っている」


谷沢藍は少しばかり思案顔だったが、
「まあ、酒の上での発言に責任は問わない主義なので思う存分土足で立ち入っていいよ」

そこまで酔ってはいなくて正直なところ寝てしまったのが終電を逃した原因なわけだったわけだけど、なるほど。それなら遠慮なく。

「じゃあ、その付き合ってるオトコってのは何時、何処で、どう知り合ったの?で、どんな人なの?」

「おお、いい調子ね。んと、卒業してすぐかな。わたし就職したでしょ。その時の同僚のコの紹介。一緒にさ、川原でバーベキューしたの丹沢かな?まあ、健康的なコンパみたいな感じ。その時にメアド訊かれて、何度か一緒にドライブして・・・で付き合い始めた。そんで・・・こんな感じの人」
谷沢藍は携帯をぼくに手渡した。

サングラスに短髪の金髪でコワモテのオトコの写真。
良く言えば「ワルイド」な顔。
普通に偏見込みで言えば「極悪そう」な顔のオトコが笑顔の谷沢藍と一緒に写っていた。

「また・・・ごく、、いや、ワルイドな彼氏だね」

「極悪人っぽいでしょ」
にっこりと微笑みながら彼女は言う。
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