北千住奇想曲
短めに揃えた髪を仕上げにタオルでふき取り、ぼくは脱衣場を出てリビングのドアを開けた。


リビングのソファに綺麗にたたまれたタオルケットが置かれていた。
谷沢藍はタオルケットの横にちょこんと座り本を読んでいた。
かなり集中しているようだ。

「でたよ。タオルは洗濯籠に入れといたけど大丈夫?」

ハッとしたようにぼくの方を向いた彼女は「うん」とだけ返事をして本を閉じた。

「じぁあ、わたしもシャワー浴びてくるね。客布団ないからソファで我慢してね。寝てていいよ、明日早いだろうし」

そう言ってリビングを出ると玄関口の手前にある部屋に入って行ったのが見えた。
彼女はパジャマらしきものを持って現れリビングに顔を出して言った。
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