北千住奇想曲
リビングのドアがゆっくりと開いた。パジャマ姿の谷沢藍だった。
髪の毛はドライヤーをかけたのはほとんど乾いている。
内容が頭に入ってこない割にはぼくも集中していたようだ。全く気がつかなかった。

化粧を落とした彼女の顔は幼さが感じられた。

「あ、起きてたんだ。やばっ」

谷沢藍は必死になって肩にかけたタオルで顔を隠した。

「全然変じゃない。むしろ若々しいし、かわいいと思うよ」

ぼくは正直に感想を伝えたが、彼女はまるで信じていなかった。


「んなわけないじゃん。変だよ、見せられるものじゃない」

まったくなあ。
こう言うのって本人が気にしているほど誰も気にしちゃいないのだが。

タオルで顔を覆った状態で谷沢藍は近寄ってきた。
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