北千住奇想曲

そんな回想にひたりながら僕は谷沢藍との会話を続けていた。

「特定のジャンルに拘らずに読んでるつもりだったんだけどな、文字が書いてあって適量ならなんでも。あとは文庫本であることが条件だったな」

「ふーん。あまりマネしたくない読書法だね。面白くなさそう」

図星。
運良く良い本に巡り会えない限りは、楽しくはなかったのは事実。

「でもさ、あの頃はちょっと変わった人だけど、選んでいる本のセンスがいいな、って思ってた。ヤマダくんが読んだ本をそのまま帰りに買った事もあったな」

「へぇー」

谷沢藍の生活にぼくが少なからず影響を与えていたことに驚いた。

「わたしはさ、結構ヤマダくんに注目してたんだよ、あの当時から」

それってどういう意味だ？