おかしな国の住人たち






それからしばらくすると耳元で(耳なんてないけれど)声がしました。




キリギリスはゆっくりと目を開きました。




「大丈夫ですか?」




―――アリでした。心配そうにこちらを見つめています。




キリギリスは消え入りそうな声で言いました。




「あんなことを言った俺に優しくしてくれなくていいよ」




キリギリスは柄でもなくそう言って笑いました。




するとアリが泣きそうな顔で首を横にふりました。




「あんまり無理をなさらないで下さい。大丈夫です。みんなキリギリスさんが本当は優しいってことは知ってますから。さあ、みんなと一緒にご飯を食べましょう。お腹、すいているでしょう?」




アリは涙を目にためながらいいました。




「ありがとう」




キリギリスは初めて人の前でちゃんと笑いました。




それは雪の降る、
静かな夜だったといいます。










おしまい♪
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