飛翔の月
儀式用の堅苦しい着物から、普段着ている着流しに着替える。
赤魏は内心、元服も家督もどうでも良かった。
何かに流されて生きてきた。
元服を拒んだのは、そんな自分への反抗心と、母の面影のせいだ。
しかし、これからのことは自分でなんとかするしかない。
巫女を、見つけなければならない。
巫女とは、この民が皆能力者ばかり飛翔之国に生まれながらに、一切の不思議な能力を持たない娘のことである。
その娘を見つけだして妃としなければならない。
東西南北それぞれの家に、そう先祖代々伝わっている。
昔、東の青龍領で巫女を見つけられなかった領主がいた。
その領主は家督である青龍の神力を継いでからわずか十三日目に青龍の力に喰われて亡くなったのだと、赤魏は事あるごとに言い聞かされてきた。