飛翔の月

旅装束に着替えた赤魏は、城の大門の前に来ていた。

巫女探しは当主自ら徒歩で旅をする。

しばらくして見送りのため赤通も大門に来た。

しかし赤通は赤魏の姿を見るや怒鳴り付けた。

「こんの馬鹿者が!
何故わざわざ、『私は領主です』と言うような格好をする。
領主に取り入ろうとする輩は山とおる。
巫女でないおなごをつかまされたらそなたはどうするつもりだ!」

赤通がそういう理由は、赤魏の着ている真っ赤な装束に対してだ。

赤は、朱雀ひいては朱雀家や朱雀領を象徴する色であり朱雀家の一族にのみ着用を許された色だからである。

従って、赤という禁色を身につけていた場合すぐに領主とわかり、巫女でない娘だろうと構わずに領主の妃にしようと寄ってくる無類の輩が次々と現れてしまう。


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