飛翔の月
赤魏は団子を食べ終えるとすぐに宿に戻った。
単に疲れて、今日はもう面倒になっただけだが。
「はーっ!
もう無理!
朱雀領広すぎ!」
って、俺の領地だ。
なら広くて結構!
『なんだそれは。
支離滅裂だぞ。』
不意に、頭に直接声が聞こえた。
「ん?
朱雀の君?」
赤魏も頭の中で言葉を返す。
『朱雀の君などという堅苦しい呼び名は好かん。
我が名は珠煌(シュオウ)。』
「珠煌?
ヘェ、カッコイイな。」
『だろう。
これからはそう呼んでくれ。
敬語もいらん。
私とそなたは同胞。』
「そりゃ、ありがてェ。」
『当然のことだ。
同胞に敬語で話されたら吐き気がするだろ。』
「あァ、なら、遠慮なく。」
朱雀、珠煌か。
思ったより面白れェ奴だ。
赤魏が不敵に笑うと、珠煌もクックッと喉を鳴らして笑った。