飛翔の月
その日の夜半、疲れた赤魏はいつも以上に爆睡していた。
しかし、何やら宿屋の外が騒がしい。
珠煌はそれに気づき、赤魏を起こそうと呼び掛ける。
『赤魏、赤魏。』
どんなに呼び掛けても、赤魏はいっこうに起きそうもない。
この野郎、赤通のジイさんに散々、深く寝るなと言われて来たんじゃねェのかよ。
珠煌は強行手段に出た。
『起きろ!!』
自らの神力で赤通を燃やす。
勿論、だいぶ手加減しているためただ熱いだけだが。
「ん……んん…?
あっちぃ……。」
なかなか赤魏は起きない。
まだ起きんのか、このバカ領主め。
珠煌は更に力をこめる。
「あ…あっちぃ!!
おい珠煌!
テメェ何しやがる!?」
『うるさい奴だな。
早く外を見てみろ。』
「外?
外に何が………!」
外、すなわち宿場街には多数の篝火があった。
おい、まさか俺の正体がばれたんじゃアねえよな。
『安心しろ、お前など捕まえるだけムダだ。』
「珠煌、勝手に人の心読むなよ。」
『読んでなどいない。
顔に出ている。』
げっ…。
そういや、これも今まで親父に言われていたような、いなかったような…。