飛翔の月
「なァ、何をしていたかくらい、教えてくれよ。」
赤魏は困惑している町人たちに構わず、再び問う。
「盗賊が出たのじゃ。」
集団の奥から答えたのは、この町の長老だ。
「盗賊?」
「ああ。
ここ最近、頻繁に出て来よる。
ゆえにワシらは、戦うことに決めたのじゃ。
邪魔立てするでない。」
「邪魔をするつもりなどない。
だが、どうだ。
俺も手伝わせてはくれねえか。」
『おい、お前、何をするつもりだ?』
「俺は故郷の村じゃ一番の炎使いだった。
損はさせない。」
『無視するな!』
(うるさい。
ちょっと黙ってろ。)
「しかしなァ…」
町人たちは思い切り怪しいという目で赤魏を見る。
『やめておけ。
正体がばれたらどうするつもりだ。
それにお前は巫女を探さねばならんのだぞ。』
珠煌も反対する。
しかし赤魏は不敵に笑う。
(んなモン、後だ後!
どこにいるかわからねえ巫女を探すより、こっちの方が面白そうだろ?)
『お前なァ…』
「大丈夫だ。
俺は怪しい者じゃない。」