飛翔の月
「何だ、テメェ…」
「名乗る必要など無い。」
「チッ…!
やっちめェ!」
一人の声で全員が赤魏に殴り掛かる。
相手の数は四、五人。
勝てない数では、無い。
殴り掛かって来た男を一人、また一人と倒していく。
「ひっ…!」
ヒョロッとした頼りなさげな男が悲鳴を上げる。
「怯んでんじゃねぇ!
炎だ!!
炎を使え!!」
男の指示で赤魏と距離をとり、大きな炎の塊を創る。
それを見た二人の娘は目を固く閉ざした。
赤魏は力を集中する。
炎玉が放たれた瞬間、赤魏は同じ大きさの炎をぶつけ、相殺させた。
その、物凄い霊力の圧力で周りに突風が巻き起こされる。
少しでも油断したら、吹き飛ばされそうだ。
「…なっ、何者だあ!!」
相手は完全に怯んだ。
──畳み掛けるか。
助走をつけ、一気に飛び出す。
拳を振り上げた、その時だった。
「待ちな。」
後ろから声がした。
紙一重のところで拳はピタリと止まった。
後ろを振り返ると、盗賊の一味と思える男達が娘達の首元に刀を当てていた。
「…やめて………」
娘達は涙を流し、弱々しい抵抗をするが、全く意味が無い。
「チッ…」
赤魏は舌打ちして、両手を下げた。
そうしている間に一人の大男が辺りを捜索する。
伊気はじっと息を潜めるが、敢なく見つかってしまった。
「こいつら、連れていけ。」
ある男の命令で赤魏達は縄をかけられ、そのまま何処かへ連れていかれてしまった。