飛翔の月
赤魏は、広くて松明の光で照らされている広間に連れていかれ、部屋の真ん中あたりの柱に縄で縛り付けられた。
どうやら盗賊達の集まる酒場らしく、十人ほどの男が酒を飲んでいた。
ガタ、と音がし、一際若い男が入ってきた。
「頭、お帰りなさいやせ!」
中の男達は一斉にその青年に頭を下げた。
それだけで、この青年が盗賊達を率いる頭目とわかる。
「そいつか。」
頭目はちらっと赤魏を見て問う。
「へい、かなり強ぇんで生け捕りにしやした!」
先程まで赤魏を殴っていた大男が答える。
「ほう…」
頭目は赤魏にゆっくり近寄り、片手で顎を持ち上げ上を向かせた。
「こいつは…」
頭目は赤魏の顔を見て驚きを隠せない。
もう一度、まじまじと赤魏の顔を見た。
赤魏もこの若い頭目の顔には見覚えがあった。