飛翔の月
確かに、よくみれば髪が赤っぽい。
赤至が失踪したのは元服の後だったため、朱雀家の証ともいえる赤い髪をしていても不思議ではない。
「お前ら、しばらく出ろ。」
赤至は威圧感のある声で命じた。
盗賊達は渋々、部屋から出る。
二人きりになり、赤至は赤魏の近くに胡座をかいて座り、酒を一口呑んだ。
「…兄貴、だな。」
赤魏は兄を睨みながら訊いた。
「──ああ。」
赤至は短く肯定し、酒に口をつける。
『赤魏、こやつ…』
(珠煌、知ってンのか。)
『まあな…』
「珠煌か、久しいな。」
「え?」
「俺が珠煌を知っているのが不思議か?
俺には声も聞こえているし、姿も見えるぞ。
今はお前の中に姿を隠しているようだがな。」
(珠煌、どういうことだ!?)
『彼奴は、私が本来守護する筈だった男だ…』