戸惑いプリンセス
「はぁー」
和紗は榛原を見て溜め息をついた。
だが、すぐに暗くなる気持ちを追い払った。
ここまで来たのだ。
絶対に榛原を振り向かせてみせると意気込み、和紗は小さく頷いた。
その時、ふいに和紗の耳に聞き覚えのある音が響いた。
慌て前を見ると、そこには朝同じく遅刻してきた男子生徒がいた。
片足重心で立ち、ポケットから手を出そうとせずにだるそうに話している。
「あー…。安斎悠壬です。趣味とか特技とかは特に。
まあ、宜しく」
それから面倒臭そうに頭を下げて、すたすたと席に戻っていった。
何あいつ。
和紗は苛立つ心を収めようと拳を強く握った。
それからあからさまに面倒臭いオーラを放っている悠壬を睨みつけた。
初めての顔合わせの席で、その態度は無いだろう。
和紗は安斎悠壬にはっきりとした嫌悪感を覚えた。