戸惑いプリンセス




微かに記憶に残っている映像を頼りに、和紗は歩く。


自己紹介の後に軽く校内を案内された時に知った理科準備室に向かって。


案内のとき、榛原が「俺に用があるときはここに来ればいい」と言っていたから。


だから和紗は、啓也に話し相手になってもらうためにこうして曖昧な記憶を頼りに歩き回っているのだ。


「あ、あった!良かったよ、見つかって…」


暫くすると視界に理科準備室という文字が映った。

途中何度も迷いそうになっただけに、無事目的地に着けたときの喜びは大きい。


教室と同じようなドアの前に立ち、恐る恐るノックする。


「はい。誰です?」


返事を期待していなかったが、すぐさま中から啓也の声が聞こえてきて和紗は驚く。


「あの、結咲ですが…」


驚きながらいうと「和紗?」という戸惑う声が聞こえ、直後ドアが開かれた。




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