戸惑いプリンセス


「何してんの」


ドアを開けたまま啓也が言う。
声音が怒っているように思えて、和紗は縮こまる。


「何って。特に用は無いんだけど、話せないかなぁ…って思って」


尻すぼみになる語尾とさ迷う自然。
どうしてか、この場から去りたい気持ちになる。

すると上から盛大な溜め息が聞こえてきて、和紗は俯いていた顔を上げた。

途端に目に飛び込んでくる啓也の呆れ顔。

だが、その瞳はどこまでも穏やかな光を帯びていて、息を呑む。


またひとつ、好きが増えた気がした。


「今日だけだからな」


言うと啓也はドアを大きく開き、和紗を招き入れた。




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