戸惑いプリンセス


レトロ調なソファーに座ると一一本当はただ古いだけだが一一心地よい音が鳴る。

質素な感じに安心しつつも、視線を上下左右に走らせる。


何度見ても汚いのは壁と床だけで、それ以外は全て綺麗に整頓されている。

カーテンやソファーなども啓也の色に染められていて、なんだか啓也の部屋に遊びにきたような気分になる。


「和紗もコーヒー飲むか?」


四方八方に顔を向けて物珍しそうにしていると啓也が自分のコップを持ち上げて訊いてきた。

だがコーヒーが苦手な和紗は首を横に振った。

すると「ふーん」と手のひらでコップをいじりながら啓也が向かいのソファーに座った。


「本当にただ来ただけなんだな」


コーヒーを一口含んで言う。

何を分かりきったことを。

そう思いながらも一応答える。


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