戸惑いプリンセス
2日目‐1
「ちょっと。空気重いんだけど。辛気くさい顔しないでくんないかな」
隣から秋穂の若干苛立ちを含んだ声が聞こえる。
がしかし。
そんな秋穂の声は今の和紗には届かない。
自分の世界に篭もっているのだから。
次々と教室が生徒で埋め尽くされていく中、和紗は机の上で頭を抱えていた。
理由はもちろん昨日の帰り道の事。
「はぁー」
思い出すと溜め息が出る。
なんで何も言わずに帰ってきてしまったのだろうと、今更ながらに自分の行いを反省した。
助けて貰ったことは変わりのない事実で、助けてくれた相手は確かに安斎悠壬で。
安斎悠壬は気に入らない。
だが安斎の行動まで否定できる程、和紗も子供ではない。
だから今日は謝ろうと思って覚悟を決めてきたのだ。
先刻から吐いている溜め息はそれ故である。