戸惑いプリンセス
「すみません。遅れました」
滑らかに紡がれた謝罪の言葉は取って付けられたように棒読みだった。
この人…絶対反省してない。
和紗は思わず零れてしまいそうな笑みを無理やり閉まった。
和紗の前には一人の男子生徒が立っている。
背中を向けているので顔は分からないが、この学校の生徒であり先程の気配の正体であるようだ。
「初日から遅刻とはなかなかの逸材だな」
「あー…すみません」
教師の冗談めかした台詞と再び聞こえる凹凸のない声音。
またしても棒読みで、和紗は今度こそ笑いを堪えることが出来ずに吹き出してしまった。