君、想ふ<壱>
於琴は、住まいの離れで粥をすすっていた。梅がひとつと鰹節を振りかけて、味も薄めである。母の於豊が言った。
「高倉様が持ってきてくだすった梅は美味しい?於琴。滋養に良いのですって」
「えぇとても美味しいわ、母さん。
高倉様にはいつも、ご迷惑をおかけして…申し訳ないわ」
「何を言いなさるの、於琴は!あなたが良くなって高倉様にお礼をおいいにならないとね!だから早く元気におなりよ」
於琴は知っている。
母はいつもそう、無理に笑おうとするから、涙がいっぱい溜まるのだ。於豊は目頭を押さえると、すっくと立ち上がって店の手伝いをしに行った。