君、想ふ<壱>

いそいそと履き物をぬいで離れへ
あがった於琴は、座布団を出し、
矢吉に座るように進めた。
ちょうどよく小姓がお茶を持ってきたので、高倉様からいただいた栄屋の金平糖を器へ盛った。

「さ、お上がりなさいな矢吉さん。
離れに来たということは私に話があるのでしょう?」

矢吉は渋々といったように金平糖を口に含んで、お茶をひとくち飲んだ。

「実は、江戸からここより昔に奉公に上がっておりました実家の近くにあります古い家柄のお嬢さんと結婚することになりまして」

「結婚…!あら、おめでとう!
よくお母様方が許してくだすったこと。


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