純情BABY
「おはよう渋谷くん!」




近寄って行って女子たちに囲まれてる渋谷に声をかけた。




一斉に振り替える群れ。




みんな睨み付けるように見てきて一瞬目を見開いた。




渋谷も同じだったみたい。そんな驚かなくても……。





あんたが私にこの格好を指示したのに、驚くのは失礼だ。





『あれ〜もしかして益田さん?
ずいぶん化粧でごまかしてたんだね。まるで別人みたいだよ?』





群れの中のひとりが小バカにするように声をかけてきて、その言葉にみんなクスクスと笑う。





集団での嘲笑に悔しい気持ちになる。





くそう。負けるもんか。





「渋谷くんが、化粧薄めの方が好きだって言ってくれたから変えたのに、そんな言い方されたらショック……」





消え入るような声で言って両手で顔を覆った。




いかにも悲しくて泣いてます、みたいに見えるように。




もちろん演技だけどね。




私そんな事くらいで泣くようなキャラじゃないもん。



でも正面から対抗したら間違いなく痛い目みるし。




顔を覆ってる両手の指のすき間からちらりと渋谷を見た。




バッチリと合う目。




この子たちアンタのファンみたいなんだし、今後私に害がないように助け舟出してよ、と念を送った。




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