純情BABY
『良かったな。ああして牽制しとけば、悪質な嫌がらせはほとんどされないだろう』




昼休みの音楽準備室で渋谷と顔を合わせて開口一番でそう言われた。




「うん。そうだね……」




渋谷と2人きりなのに、甘い雰囲気もないこの状況。




もしかしたら…なんて期待してただけにまた軽く凹んだ。




いや、あの命令系のメール文でわかってはいたけどさ?




やっぱり期待するじゃん。




何に期待って、それは……




「あの、さ。本当?」




『あ?何が?』





「だから、嬉しいって言った事!

その…私が化粧とか格好とか変えた事が、嬉しいって……」





自分から聞いておきながら急に恥ずかしくなってきてゴニョゴニョと口ごもってしまう。





亜弥は今までの格好よりもいいって言ってくれたけど。




けれど、肝心の渋谷からは似合ってるとかはっきり言われてない。




嬉しいって言ったのも周りを宥めるためだけの言葉だったかもしれない。





そう思うと、似合っているのかどうか、言葉で聞きたくなってしまったんだ。




< 46 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop