純情BABY
『入学式で新入生代表の挨拶してた人だよ。ほらみんなかっこいいって騒いでたの覚えてない?』




そう言われてなんとなく思い出してきた。




確かにクラスの女の子たちが色めきだってたっけ。




あの日私、寝坊して慌ててたせいでコンタクトレンズし忘れて周りの景色も、人の顔もぼやけてしか見えてなかった。




だから当然渋谷くんとやらの顔もわかんなかった。




「その渋谷くんてどんな人なの?」




『整った顔にすらっと長身。モテるのにそれを鼻にかけない。勉強も出来て誰にでも優しいと、もっぱらの噂だよ』




……なんだか出来すぎの人間のような気もする。




「その噂、本当なの?それにそんなスバラシイ人なら彼女いるでしょ?」




『誰に聞いて彼を悪く言う人はいないよ。それに彼、ずっとフリーなんだって。
あ、噂をすれば…』





指差した先は廊下。




ひとりの男子生徒が教室の前を姿勢よく歩いてた。




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