純情BABY
『悪い。今さらだよな。美鈴、カレシいるもんな。渋谷と上手くいってんだろ?』




答えに困って何も言えずにいると、昇はやけに明るくそう言った。




「当たり前でしょ!。上手くいってるからこうして待ってるんだもん」




無理してるって気づいた。無理してる理由はーー…




私と別れたこと、後悔しててやり直したいとか思ってるのかなー、なんて。




でも仮にそうだったとしてもさ。昇の言うとおり今さらなんだよね。




私には渋谷がいるし。




だから昇の気持ちには気付いてないフリをして明るく返した。



ヤりたいだけで私と付き合ったわけじゃなかったんだ。




ちゃんと私を好きで付き合ってくれてありがとう。そんな気持ちを笑顔にこめて昇を見た。




そんな私を見て微笑む昇。



なんだか照れくさい空気感みたいなのを味わっていた時だった。




私でも昇でもない人の声が聞こえてきたのは。





そしてそれは、私が一番待ち望んでた渋谷のものだった。





< 98 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop