やさしい声【短編】
声
拓真(タクマ)と初めて会ったのは
1年前、高校の時の友達、紗英(サエ)に紹介された時だ
拓真の第一印象は寡黙
周りの話にうなずいて相づちをうつくらいで
気難しそうに眉を寄せてビールを飲む横顔を見て
常々、好きなタイプはおしゃべりな人って言ってた私は
この人とは
これっきりだなと感じてた
だから
その2日後に拓真から「食事に行きませんか?」とメールが来たのには正直おどろいた
ふたりで来た居酒屋で
「アドレスよくわかりましたね?」と訊くと
「紗英ちゃんから聞いたんだ
ごめんね?」と明るい笑顔で返された時は
だいぶ印象が変わったので、あれ?って思った
「無口な人って思った」
お酒を飲みながら拓真に第一印象を素直に話すと
「女の子は
無口な男が好きじゃない?
だから猫をかぶってたんだ
オレ、本当は明石家さんまバリにうるさくて
あ、あんなにしゃべりのセンスないけど」
つまらない おしゃべり男って最悪だよねって拓真が笑うから
「私は好きですよ」って答えた
それが私と拓真の始まり