やさしい声【短編】






「私が眠るまでお話して?」













拓真との初めてのセックスは
すごく慎重な物だった




優しく そっと触れる指先は
くすぐったいくらいで



「大丈夫?」とか
「痛くない?」とか



いちいち私の反応を気にする



緊張した 少し臆病な目に見つめられると



なんだか自分が 宝石とかそんな『いい物』になった気分になって



拓真が好きだと素直に思えた







青い薄闇に包まれた私の部屋で



狭いシングルベッド


高い体温を寄り添わせ



拓真はじっと天井を見てた



その横顔は初めて会った時を思い出させて




「私が眠るまでお話して?」



小さな声は闇にすぅっと溶けて



拓真に届いたか不安になった



拓真は優しく表情を崩し
微笑みながらこっちを向いて



「真琴(マコト)…子供みたい」



大きな手のひらで私の頭を包み


そっと撫でて


拓真の指の間を
私の髪が すり抜けて行く



「怖いの」


「え?」


「隣に人がいるのに
何も聞こえないのが。

私、すごく怖いの」


少し考えるように間をおいて



「どうして」って言った拓真の言葉を無視して



「お願い、私が眠るまで
何か話して、声を聞かせて」




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