【鬼短1.】顔無し鬼
ななちゃん、ななちゃん。
とうとうこの日が来たか!
ななちゃんに恋の相談を受けるなんて!
むずかゆいような、嬉しいような。
なんだか照れ臭いね。
…ケイタくん!
きみを絵のもでるにしたい、って声かけてきた子でしょう?
《真夏の太陽の下を駆け抜けるななさんを、描きたいと思ってたんだ。》
って言ったんだっけ?
今時珍しいろまんちすとだよね。少しキザだし。
ななちゃん、嫌じゃないなら付き合ってみたらいいよ。
きみは十分にきれいだよ!
夏は真っ黒に焼けて、光る汗を流しながら走るななちゃん。
どんなに着飾ったお姫様より魅力的だ。
好きになることに、お金があるとかないとか、関係ないでしょう?
そりゃあきみの家は、おかあさんは朝から晩まで外で働いて、大変だ。
おばあちゃんだってもうお年寄りなのに、庭を畑にして家族の食糧を作ってる。
貧乏で大変、なんて思うヒトもいるかもね。
でもケイタくんは、そんなこと気にしちゃいないんだろう?
君が泥んこになって日焼けして汗をかいてる姿を、美しいと思ってくれたんだろう?
気に病むことなんて、なにもないよ。
これからは、子供のときたくさん愛された分だけ、誰かを愛していかなきゃいけないからね。
ななちゃん。