【鬼短1.】顔無し鬼
【かおなしさま。】
誰かが呼んでいる。
【かおなしさま。わたしですよ】
おや……?
もしかして、おばあちゃん?
よかった、元気になったのだね。
【長いこと参りませんで、すみませんでしたねぇ、かおなしさま。】
いいえ、いいんですよ。
ところでおばあちゃん、ななちゃんは?
【ななですか?ななは、ちょっと出かけています。】
そうですか。
……おや?
どうして、わたしのこえが聞こえるのだろう?
【私も、姿無いモノになってしまいましたからねぇ…】
それは…
まさか、おばあちゃん、
おばあちゃん!
【でもお陰様で、やっとかおなしさまにお会いできた。
長い間お話しを聞いて下さった、御礼が申し上げられます。】
ひさのさん!
そんなことは良いんだ!
そんなことより、ななちゃんを…
ななちゃんを、守ってあげてください…!
【私には、もう出来ません。
それに、あの子はりっぱに、大きくなった。
もう、ひとりでも生きていけるでしょう。】
何を言うの、ひさのさん!
あなたは、おばあちゃんだよ。
おばあちゃんは、孫を守ってあげなきゃ!
おばあちゃん!
【もう、私の時間は終しまい。】
おばあちゃん…
【かおなしさま。私は貴方様のように、ずっとあの子を見守り続けることはできません。
ななを、どうか。
ななをどうか、これからも見守ってやってください。】