【鬼短1.】顔無し鬼
−"かおなしさま。
しんすけ叔父さんがね、あたしを引き取ってもいいって言ってくれたんだ。
あたし、しんすけ叔父さん、大好きだから、すごく嬉しかった。
《子供もいないから、何にも気兼ねせずうちに来たらいいよ》
って言ってくれた。
この家は、売ることになったんだ。
まだお父さんの借金、残ってたから。
……かおなしさま。ごめんね。
もう、お話ししに来れなくなっちゃう。
ごめんね…。
《由緒のある祠だから》
って、叔父さん、不動産の人説得してくれたから、かおなしさまの家は無くならないよ。
大丈夫。
ごめんね。
花壇も、潰されちゃうんだ。
ごめんね。
せっかく今年は、かおなしさまの好きなヒマワリが豊作なのに!
去年の秋にもらったコスモスの種も、空いてるところに植えたのに。
ごめんね、かおなしさま。
ごめんね………"