【鬼短1.】顔無し鬼
−"ばあちゃ、ばあちゃ、みて!"



次の日の朝。
おばあちゃんに言われてわたしのところに来たななちゃんは、大喜びで走って帰っていった。

ふふ、お礼、気に入ってくれたみたい。




−"まあまあ。これは、お花の種だよ。かおなしさまにいただいたの?"

−"うん!ホコラの前に、あったの!"



そう。これがわたしのお礼。

いろんなお話しのお返しに、わたしは花の種を贈る。


もっとも、この百年くらいはお話しが少なくて、お礼をするだけの力がなかったから、おばあちゃんにはあげたことがなかった。

ごめんね、おばあちゃん。

ななちゃんの顔を見たら、どうしてもお礼がしたくなったんだ。

でも力はやっぱり足りないから、種は一粒だけ。



−"かおなしさまによくありがとうを言って。それから、種は大事に育てるんだよ。"

−"うん!"



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