キミは聞こえる
「すいません」
小さく頭を下げてブルーシートを立ち、かかとをつぶしながらシートを離れて携帯を開くと、画面には「代谷」と出ていた。今、泉が世話になっている家の固定電話だ。
父親の携帯は「父」と登録している。
どうしたのだろう、と思いながら受話ボタンを押した次の瞬間、携帯から悲鳴のような声が飛び出してきた。
「い、泉ちゃん! いま、どこ!?」
声は友香の母親のものだった。なぜかひどく怯えているようだが一体どうしたことか。ただならぬ様子に、泉は一つ深呼吸をして「桐野さんトコの畑だけど、どうしたの」と落ち着いた調子で返した。
すると友香の母親は、泣き声混じりの叫びにも似た声を上げて言った。
「お義父さんが、た、倒れたの!!」