キミは聞こえる
三章-3
残された泉と桐野は家の中に戻った。
リビングに敷かれた布団を畳んで茶の間の隅に寄せる。と、
「―――代谷、これ」
ダイニングテーブルに置かれていたメモを掴んだ桐野が険しい顔を泉に向けた。
受け取り、視線を落として―――直後、泉は息を呑んだ。条件反射のようにメモを握りつぶしたくなった。
書かれていたのは通夜に必要な物の置き場所についてだった。
部屋の家具を移動しなければ開けられない襖なども指示されていたため、桐野をよこしてくれた彼の母の判断は正しかったかもしれない。
が、達彦が逝ってしまうかどうかはまだまだこれからの話だ。
代谷の嫁としてしっかりしようと奮い立ってくれた気持ちはありがたいが、いくらなんでも達彦の世話をしながら浮かんだ行動がこれかと思うとがっかりせずにはいられない。
いや……もしものことを考えれば、先を先をと考えるのは当然のことかもしれない。これが大人、と言われれば納得もいく……。
が、まだまだ子供の泉にここまでの発想はとてもじゃないが追い着けない。どうしても行動より気持ちが先走ってしまう。
―――落ち着け私、らしくない。
泉は自分に言い聞かせ一つ息をついた。