キミは聞こえる

「メモの内容は頭に全部入れた。だけど、この指示通り動くのは病院から電話がかかってきたらで間に合う」

 かかってこなければ準備などまったく必要ないのだから。

 いまはただ、
 そうであることを、切に願うばかりだ―――。

「桐野君はお母さんたちに連絡入れたら」
「ああ、そうだな」

 迷惑をかけたくないから帰ってもいいよ。

 と本心では言いたいところだけれど、きつく握られたメモの内容を考えるとそうも言えない。
 泉一人ではいろいろと力が足りなすぎる。

 ひとまず。

(お茶でも淹れるか)

 手伝いに来てくれたとはいえ桐野は客人だ。

 必死に走ってきて、口の中にまとわりついている血のような不快な味を洗い流したい気持ちもある。

 泉は台所へ向かった。

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