キミは聞こえる
今日もナースステーションに行くと友香はいないと言われ、仕方なく桐野の祖母が寝ている階にエレベーターで上ってもみたがそこにも友香らしき人はいなかった。
(……どこにいるのよ)
友香の顔を見たいがため重い荷物を抱え必死に歩いているわけだが、そろそろ体力の限界が見えてきた。
もういっそ手渡しじゃあなくて誰かに預けて帰ってしまおうか、といよいよ本格的に考えはじめた頃。
「―――代谷さーん!」
桐野の声よりいささか高めの、しかし桐野に勝る爆風並みの声が病院の廊下を駆け抜けた。その場にいた患者や看護師全員の視線が泉と泉の背後に注がれる。軽く頭痛がした。
おそるおそる振り返るとそこには、学生服を身にまとい大きなスポーツバックを肩にかけた桐野の弟、桐野家三兄弟の末っ子、康士が先ほどの母親同様大きく腕を振っていた。
「康士くん」
「どうしたのこんなところで? あ、俺はばーちゃんの見舞いだけど」
「はとこがここで看護士をしてるの。荷物持ってきてって頼まれて」
「それってもしかして友香ねーちゃんのこと?」
「そう。仲いいの?」
「仲いいっつーか、悠士兄貴のカノジョだし。そう呼べッて言われた」
「へぇ……―――えっ!?」