キミは聞こえる

 知らなかったの? とのぞき込まれ、首を振ると、「じゃあ言っちゃまずかったかなァ。でもこれ結構公認されてることだから別にいっか~」といたって暢気に康士は笑う。
 悠士は桐野の兄だ。桐野家の長男で今年高二と聞いた。友香は今年二十三だ。六歳差か。まぁ問題はない年差だが、いやそもそも恋愛に年齢に年の差は関係ないと言うが、高校生と社会人の恋愛が―――それも女のほうが年上の恋愛がこうも身近で成立しているとは露ほどにも思わない泉はなんと返せばわからず、沈黙してしまった。

「兄貴って老け顔だろ? 並んで歩いてても違和感ゼロなんだぜ」

 弟よ、はっきり言い過ぎだ。ましてやくすくす笑っちゃいけない。

「あ、噂をすればねーちゃんだ」
「―――ああ泉。荷物持ってきてくれたの? ありがとね」
「ううん。今日も泊まり?」
「そうなのよぉ…。でも明日はきっと帰るわ。んで、夕方から買い物行くわよ。ストレス発散には大人買いよねやっぱ。だから泉」

 泉の肩に手を乗せて友香は顔を近づける。嫌な予感がした。「……な、なに?」

「付き添いよろしく」

 がっくりと泉は肩を落としてうなだれた。

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