キミは聞こえる
「……あり、じゃないのかな。よくわからないけど」
年下ならよっぽど生意気じゃない限り「黙れ」と言えば黙ってくれそうな気がする。
異性に求める条件が「黙れ」とは我ながら艶っぽさの欠片もないと思ったが、浮かんだ条件がそれしかなかったのだから仕方あるまい。見た目より性格である。大人しければなお良い。
「ほ、ほんとっ!?」
「…た、たぶん?」
興奮したように康士が尋ねる。勢いに押されて上ずり気味に返すとますます彼は喜んだ。
(ほんと、わけのわからない子だ)
―――それから代谷家に到着するまでの間、康士の際限ないおしゃべりに付き合わされ、泉は終始頭痛が止まらなかった。