キミは聞こえる

 ―――佳乃は結局サッカー部のマネージャーにはならず、写真部に入部した。

 入るところがなく、しかし部活入部は強制だと言うから―――『入るところがないなら代谷さんも一緒に入ろう!』―――しかたなく泉も写真部に入った。

 近々、展示会がどこかの小規模施設で行われるらしく、部内投票で上位三位に選ばれた作品は一年生のものであろうと展示会に出展するという。

『一人何作品でも応募は可能だ。全員、最低でも一枚は提出するように』

 そう、部長は言った。

 泉はすでに提出済みである。
 こういうときの泉は行動がべらぼうに早い。
 面倒なことを腹の底から嫌う泉だが、このような期限ぎりぎりまで引っぱりすぎると逆に面倒になりそうなものに関してはずるずる引きずらないと決めている。それで堂々とダラダラするのだ。

 写真を撮りたいんだけど、と頼んで友香に初夏の装いを適当に見繕ってもらい、それらをハンガーに掛けて窓にぶら下げ、時計と夕陽が写り込むようにカメラを構え―――

 完成。

 題は、

 『陽、長くなりました』。

 ―――ではあまりにもアレだからと部長が『陽』に省略して受理してくれた。

 写真部などあってないようなものだ。
 提出が終わればあとは呼び出しがあるまで部活はない。
 ダラダラするつもりでいっぱいだった。


 それなのに……―――。

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