キミは聞こえる
(……めんどいなぁ)
ちらりと時計を見上げると時計は四時の半を指していた。
まだまだ陽は高い位置にあり、夕焼けが空を染めるにはあと一時間もかかるだろうかというところである。
授業が終了して十五分も過ぎると教室から生徒の姿は消え、残っているのは泉たちを合わせても片手で足りるほどの人数だ。
世の高校生というものは放課後友達とゲーセンに行ったりファミレスに行ったりするものだそうだがこの田舎代表鈴森町にそのような"はいから"なものはなく、どうしても行きたいなら電車かバスに乗って隣町の中央街まで出なければならない。
だから放課後に急いで乗って向かっても長居は出来ない。門限が遅い家は問題はないのだろうが、一本でも電車かバスを乗り過ごせば次のが来るまで一時間二時間待ちはあたりまえなのでどのみち長居は出来ない。夜更けに高校生が制服で出歩いていると補導なんてことにもなりかねないからだ。
だからこのあたりの学生はわりと皆、真面目に帰宅する。
寄るとしてもいまにも潰れそうな駄菓子屋かたこ焼き屋くらいなもので、"イマドキ"とはお世辞にも言えない昭和な雰囲気でそれぞれ青春、放課後を楽しんでいる。
ということはすべて友香に教わった。
泉ももし友達とか彼氏とかが出来たら気をつけるんだよ、と。
丁寧に説明してもらって申し訳ないのだが、と泉はそのとき思った。
泉がそのような無駄な時間の過ごし方をするはずはない。
いつも誰よりも先に学校を出、陽の高ーいうちに帰宅する。
それなのに。
……まったく、今日はどうしたことだろう。
展示会に出す写真を選ぶから手伝ってくれ、と半強制的に佳乃に居残りをさせられた。