キミは聞こえる
「水、もらってくるね」
「あっ、ありがとう代谷さん」

 カバンからごそごそと財布を取り出す佳乃を置いて立ち上がると、カウンター脇に設置された「ご自由にどうぞ」のポットから水を注ぐ。もちろん二人分だ。
 テーブルに戻ると、佳乃は値段きっかりの小銭を出して料理が来るのを待っていた。
 持ってきたコップを佳乃の前に置くと、自分も財布を取り出して佳乃にならうように小銭を並べた。

「全力で走ったあとでも食べたくなるくらい美味しいの?」

 水を一口含んでから、泉は尋ねた。
 おおきく佳乃が頷く。

「そりゃあもう折り紙付き。すっごく美味しいよー。尻尾まであんこぎっしり、たこはぶつ切り、ソースはどっちゃり。あんこは甘すぎないから口飽きする心配なし」
「へぇ」

 相づちを打ちながらふと、たい焼きなんていつぶりだろう、と思った。

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