キミは聞こえる
ライトの明かりに目を細める。自転車をまたいだまま泉を見下ろす男にぼんやりとだが見覚えがあった。
男の返事で確信する。
「おまえ友香んとこの―――泉、っつったか。進士のクラスメイトの」
「は、はい……代谷泉、です。いきなり飛び出して、すいませんでした」
「いや、俺のほうこそ声荒げて悪かった。ついな」
申し訳なさそうに言いながら男、悠士は自転車を降りると泉に手を差し伸べた。
悠士は泉のはとこ友香の彼氏である。それに歳の近い異性でもある。それらがあって、一瞬手を取ることを躊躇したが無下にも出来ず、おずおずと泉は手を握った。ぐいと引き上げられる。
「怪我なかったか」
「だ、だいじょうぶ、です」
右手がちょっと痛むが素直に言えるところではない。おそらく数ヶ所ほど小石が刺さったかして切れたのだろう。家に帰ったら絆創膏をもらおう。
「そうか。ならよかった。それよりどうした。ずいぶん慌てていたようだが」
「す、すみません……」
「いや、謝って欲しいとは言っていない。なにかあったのかと聞いたんだが」
「……」
言えるか、と泉は心の中で突っ込んだ。言えるわけがなかった。心を読まれて、それでパニックになって爆走してきたなどと。
黙り込む泉を怪訝そうに悠士は見つめる。
「……どうした?」
「………ッ」
「……どう、した。なにか、変なモンでも見たのか」
泉は悠士の袖を掴んだ。気づけば、指が勝手に動いていた。
悠士の表情に驚きの色が浮かぶ。が、つとめて優しく声をかけてくれる。
「そう、なのか?」
「……」
「言わないとなにもわからないぞ」
男の返事で確信する。
「おまえ友香んとこの―――泉、っつったか。進士のクラスメイトの」
「は、はい……代谷泉、です。いきなり飛び出して、すいませんでした」
「いや、俺のほうこそ声荒げて悪かった。ついな」
申し訳なさそうに言いながら男、悠士は自転車を降りると泉に手を差し伸べた。
悠士は泉のはとこ友香の彼氏である。それに歳の近い異性でもある。それらがあって、一瞬手を取ることを躊躇したが無下にも出来ず、おずおずと泉は手を握った。ぐいと引き上げられる。
「怪我なかったか」
「だ、だいじょうぶ、です」
右手がちょっと痛むが素直に言えるところではない。おそらく数ヶ所ほど小石が刺さったかして切れたのだろう。家に帰ったら絆創膏をもらおう。
「そうか。ならよかった。それよりどうした。ずいぶん慌てていたようだが」
「す、すみません……」
「いや、謝って欲しいとは言っていない。なにかあったのかと聞いたんだが」
「……」
言えるか、と泉は心の中で突っ込んだ。言えるわけがなかった。心を読まれて、それでパニックになって爆走してきたなどと。
黙り込む泉を怪訝そうに悠士は見つめる。
「……どうした?」
「………ッ」
「……どう、した。なにか、変なモンでも見たのか」
泉は悠士の袖を掴んだ。気づけば、指が勝手に動いていた。
悠士の表情に驚きの色が浮かぶ。が、つとめて優しく声をかけてくれる。
「そう、なのか?」
「……」
「言わないとなにもわからないぞ」