キミは聞こえる
「よし、だいたい覚えただろ。ここでいっちょ対戦しようぜ」
「さんざんしたけど」
「それはゲームの中のコンピューターだろ。俺とだよ」

 さんざんなんてたった三体だけだろう、と心の中で突っ込みながらテレビ台を開けて中からコントローラーを取り出す。

「桐野君と?」

 セットする手を止めて顔を上げる。

「俺じゃなにか不満でも?」
「いや、そうじゃないけど、気づけばずいぶん引き留めてるなぁ、と。お昼ご飯、食べられちゃったんじゃない?」
「それはそうだろうなぁ。兄貴食うの早ぇーから。だけど代谷にゲーム教えるってここに座ったときメシはもう諦めたわ。かーちゃんにはメールしといたから気にすんな。さてさて、俺はどのキャラにしよっかなー」

 やっぱ使うなら男だよな。イケメン、ゴリマッチョ、いやいやそれともおもいきって人外とかいいかも、とステータスを次々チェックしていると。

「そういえば、昨日は電話出れなくて、ごめん」

 コントローラーを置いて代谷は頭を下げた。
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