キミは聞こえる
「私はここに置かせてもらってる身なの。余計な心配はかけられない。本当は、桐野君のお兄さんが友香ちゃんに説明してるのも、止めたかった。けど、言葉が出てこなかったからどうしようもなかった」
「友香姉も、この家の人誰も、余計とか面倒とかそんなふうに思う狭い人間じゃねーよ」
「私が気にする」

 間をあけずそう言われて、どきりとした。

どうしてそれくらいのことを察してくれないのか、と言外に言われた気がした。
おまえはなにもわかっていない、と。表情には現れていないけれど、きっと心の中ではがっかりしたのだろうな、苛立たせたんだろうなと思うと、胸が痛んだ。

「じゃあ、なんで俺には話したんだよ」

 尋ねると、代谷はきょとんとした。顔を上げて、小動物のように桐野の顔を眺める。
 それからちょっとだけ噴き出した。

「そういえば、なんでだろうね。わかんないな」
「わかんないって、またそのテキトーな……」
「でも―――」

 代谷はリモコンをするりと桐野の手から抜き取ると、テレビへ向けてボタンを押した。

「敢えて言うなら、真っ先に連絡をくれたから、かな」
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