キミは聞こえる
≪じゃあやっぱりバスケだよね。バスケ最高!≫
≪まだ心繋いでたの!≫
≪さっきからずっと繋いでるよ。それこそ代谷さんが俺の心をのぞいて来る前からね。大人しくしてたから声は聞こえてなかったでしょ?≫

 サイテーなやつだ。
 そして、やはりそうだったのかと得心がいった。

 設楽に心を繋がれたあの一度きりで、泉が一人で"会話"を成功させられるはずがないのだ。
 なんの苦労もなく、あっけなくも繋ぐことが出来たのは、奇跡ではなかったのだ。

 それにしても。いくら思っていることがすべて漏れ聞こえてしまうからとはいえ、泉の個人的な突っ込みにまで口を挟まないで欲しい。聴くのは勝手でも、いちいち返事は要らない。まったくもって時間の無駄だ。

「代谷さんだったらどこがいい?」
「ど、どこ、だろ……」

 そこで、勢いよく手を挙げて割り込んだのは響子だった。

「はいはーい! ラクロスに来てラクロス! 参加校自体がウチ入れて二つしかないからちゃっとやってちゃっと終わる」
「二つ?」
「そう、二つ!」

 なんてことだ。

 素晴らしすぎるではないか。

 泉は響子を見上げ、手を取った。

「素敵だわ、響子」
「でしょ!? 常にやる気が人の三分の一くらいしかない泉にはぴったりだと思うのよ」
「え」

 おもわず固まってしまった。そんなふうに思われていたのか。やっぱりというか、まさかというか。
 どちらにせよ、はっきり言い過ぎじゃね、という突っ込みが飛び出す。
 そこはせめて二分の一にして欲しいところだ。
 設楽が噴き出した。

≪響子はずばずば言うからね~。仕方ないよ≫

「どうしたよ設楽。おまえ今日いつも以上に楽しそうだな」
「まぁな」

≪それもひとえにこうして代谷さんと長々と話が出来ているからこそだけどね≫
≪だからもういちいち入ってくるのはよしてってば!≫

「だからぜひとも我がラクロス部のくじを引いてくださいね、泉君」
「全力で神に祈ってみるけど、引くのは部長だからね」
「全身で全力で祈るのよ泉。もしくは部長よ~~ラクロスのくじを~~引けッ! って背後からハンドパワー」
「ちょっと千紗! あんた顔が梅干しになってるよ! それじゃ呪い呪い!」
「あっ、た、大変!!」
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