キミは聞こえる
いっそこのまま、自分が持ち合わせる力も、遠くへ消えてしまえばいいのに。
無我夢中でボールを追いかける生徒たち。止まぬ砂埃に視界が霞む。それがふいに色鮮やかになったかと思うと、続いて、奇妙に滲んだ。
見える世界がぼやけ、揺らぐ。
泣いてしまいたいと思った。
涙を流せば、この、情けなく汚れた心を洗うことが出来るのではないか。
こんな力、誰を幸せにできるでもない。
ぜったいにばれることのない卑劣なのぞき見行為。
力について深く知りたいと思った自分が愚かだったのだ。
設楽に心を繋がれて、いままで知らなかったさらなる活用術に触れ、たしかな恐怖を感じながらも、本人の気づかないところでは恐怖と紙一重の興味を湧き上がらせていたのかも知れない。
翔吾のため、友香のためと言っておきながら、本当は自分が自分の隠れた力に近づきたかっただけではないのか。
……否、翔吾を見捨てたくない思いは今なお強く、泉の中を竜巻がごとく駆けめぐっている。
しかしこれ以上、いくら彼らのためとはいえ、設楽に近づくことは避けたいとも思った。身勝手な望みが自分の中にあるのだとしたら、なおさらである。
降り注ぐ太陽がやけに眩しいと思った。
靴先に視線をおろし、心の中で呟く。
私は――。
(私は、どうしたら………)
そのときだった。
「泉、危ない!」